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中国人強制連行薮塚・月夜野事件群馬訴訟を支援する県民の会(略称・県民の会)は、2002年5月27日に県民の会が設立されました。私たちの会の活動は、直接的には、裁判の原告になっている中国人戦争被害者の要求が通るようにすること、日本政府にきちんとした責任をとらせる判決を裁判でかちとることです。したがって、裁判の傍聴に力をいれています。裁判を中心にしたこの運動の動きにあわせて、学習会や集会、さらには鹿島建設・ハザマ、政府・国会議員、地元自治体への要請行動などをおこなっています。 裁判は、2007年1月31日で前橋裁判所での裁判は結審となり8月29日に判決が出されました。内容は、「原告らの請求をいずれも棄却する」という不当なものでした。しかし、小林敬子裁判長は「原告らは、敵国日本に強制的に連行され、劣悪で過酷な労働により被った精神的・肉体的な苦痛は誠に甚大であった。原告らの請求は、日中、日中共同声明第5項に基づいて棄却せざるを得ないが、最高裁判決も述べるとおり、サンフランシスコ平和条約のもとでも原告らの請求に対して債務者側が任意に自発的に対応することは妨げられないのであるから、被害者らの救済に向けて自発的な関係者による適切な救済が期待される。」と述べました 現在闘いの場は東京高裁に移され、2009年2月26日に第3回口頭弁論がおこなわれました。 鹿島建設に要請行動を行う「県民の会」会員 中島幹事 大音声 強制連行研究がライフワークの中島幹事から、「鹿島が先頭になって、国に華人労働力の要請をした。その結果、閣議決定された・・・」と、歴史的事実から鹿島建設の企業責任を大音声で追求。最後に、「鹿島は、謝罪・賠償せよ!」「早期解決せよ!」「企業責任を果たせ!」とシュプレヒコールを重ね終了。毎回、担当部長・課長・警備員が本社前面に出てくる、その数は、警備員総勢で十数ほど。 2010年2月9日、東京高裁は事実認定、国と企業の共同不法行為を判示したが、控訴棄却。我々は直ちに最高裁判所に「上告」。現在第3小法廷係属中。よって、最高裁及び鹿島建設・間建設への要請行動を展開している。 (次の上告理由参照) 上告理由の要旨 ( 群 馬 弁 護 団 ) 一 控訴審の争点と東京高裁判決 (一)東京高等裁判所第一〇民事部(園尾隆司裁判長)は、平成二二年二月九日、中国人強制連行・強制労働群馬 控訴事件につき、控訴人らの被控訴人日本国及び被控訴人青山管財・同鹿島建設に対する個人請求権が日中 共同声明5項によって放棄されているとして、本件控訴を棄却しました。 (二)本判決に先立ち、最高裁第二小法廷は、平成一九年四月二七日、日中共同声明五項により中国人労働者の個 人請求権が放棄されていることを明らかにしており、その後、最高裁四.二七判決の影響を受けて、劉連仁事件 及び中国人強制連行・強制労働に関する札幌・新潟・東京二次・福岡一陣・同二陣・長崎等の諸事件が悉く敗れ ておりました。このため、群馬事件の控訴審における最大の争点は、「日中共同声明五項により個人請求権が放 棄されているか否か」にかかっていたのです。 (三)個人請求権の放棄という以上、放棄するのは中国人労働者もしくは中国政府であって、日本の国民、法人企業 、政府ではありません。 そこで群馬弁護団は、中国人労働者の個人請求権が放棄されていないことを示す数多くの事実(後記ア~オは その一部)を明らかにし、且つ、国際法学者の辛崇陽教授を証人とし、日中共同声明の解釈の在り方につき、条 約法条約に基づいて、詳細な証言をしてもらいました。このようにして、最高裁四.二七判決の見直しを求めてい たのです。 ア 江沢民国家主席の一九九二年四月における記者会見発言 (戦争遺留問題について)「条理にかなったやり方で,妥当に解決すべき…」 イ 銭其琛副首相兼外交部長の全人代における一九九五年公式答弁 (共同声明五項により)「放棄した国家間の戦争賠償に個人の賠償は含まれていない。」 ウ 上記銭其琛答弁を直接聞いた全人代代議員劉彩品女史の陳述 エ 中国政府要人を幹部とする対日民間賠償請求援助基金の設立(二〇〇五.一二) オ 最高裁四.二七判決の前日における中国外交部劉建超報道官の発言(一方的解釈の禁止)及び同判決当日に おける同発言(同判決の違法・無効) (四)こうした経緯にもかかわらず東京高裁は、個人請求権放棄につき、次のとおり判示して、控訴人らの請求を棄却 したのです。「しかし,控訴人らが指摘する事実のすべてを考慮に入れても,日中共同声明五項に関する上記判 断は,変更の要をみないものといわなければならない。 そうすると,日中戦争の遂行中に生じた中華人民共和国の国民の日本国又はその国民若しくは法人に対する請 求権は,日中共同声明五項によって,裁判上訴求する権能を失ったものというべきであり,控訴人らの本件訴え に係る請求権は,いずれもこれらの請求権に該当するから,控訴人らの本訴請求は,いずれも理由がないものと して棄却せざるを得ない。」 (五)つまり、東京高等裁判所は、最大の争点である個人請求権の放棄の有無につき、何らの根拠を示さないまま、 控訴人らが指摘する事実がすべてそのとおりであったとしても、個人請求権が放棄されたとする最高裁四.二七 判決の上記結論は「変更の要をみない…」としており、何故こうした論理の展開になるのか、一言半句も説明をし ていないのです。 二 上告理由 (一)民事訴訟法三一二条は、上告理由として次の事項を定めております。 ア 判決に憲法の解釈に誤りがあること(一項) イ 判決に理由を付せず、または理由に食い違いがあること(二項六号) (判決における理由不備は、審理が不十分(審理不尽)の結果であることが多い。) ウ その他(二項一~五号) また、同法三一八条は、上告を受理することができる事件として、次のものを定めています(一項) エ 最高裁判例等に相反する判断がある事件 オ 法令の解釈に重要な事項を含む事件 (二) 上記の上告理由及び上告受理申立理由に基づき、群馬弁護団は、平成二二年四 月二七日、東京高等裁判所に対し、上告理由書と上告受理申立理由書を提出し ました。理由書は七〇数頁に及ぶ長大なものでありますが、ここでは、上告理 由の骨格部分を極く簡潔に紹介することとします。 ア 憲法違反(民事訴訟法三一二条一項) 東京高裁判決および同判決が取り入れている最高裁四.二七判決は、日中共同 声明五項で中国人労働者の日本国および日本企業に対する個人賠償請求訴権を 放棄していると解釈しているところ、この解釈は、下記(ァ)~(エ)のとおり, 憲法に違反している。 (ア)憲法第一一条、一三条の基本的人権保障規定、国際人権法、国際人道法(憲法九八条二項の国際法規遵 守義務)に違反する。 (イ)中国政府の意思に反してサンフランシスコ平和条約を日中共同声明五項を解釈するときの枠組とすることは、 日本政府の願望を一方的に押し込ませる解釈であって、これは自国のことのみに専念した解釈である。この ため同解釈は、憲法の大原則である国際協調主義、同法九八条二項の条約・国際法規遵守義務に違反する 。 (ウ)中国全人代における銭其琛副首相兼外交部長の公式答弁など、中国政府の数々の見解を無視して、一方的 ・主観的解釈をすることは、中国政府の尊厳を傷つけ、自国のことのみに専念した解釈であって、この解釈は 、憲法前文、九八条二項の国際協調主義、条約・国際法規遵守義務に違反する。(エ)日中共同声明五項の 解釈は、条約法条約を尊重して解釈しなくてはならないのに、これに反して独自の解釈をしている。このことは 、憲法九八条二項の条約遵守義務に違反する。 イ 審理不尽・理由不備(民事訴訟法三一二条二項六号) (ア)東京高裁判決が取り入れている最高裁四.二七判決は、原審広島高裁及び一審広島地裁における個人請 求権の放棄に関する審理が殆ど尽くされたとは言えない状況にあるにもかかわらず、個人請求権放棄を認定 している。このため、最高裁四.二七判決には審理不尽・理由不備がある。 (イ)東京高裁判決は、控訴人らが個人請求権不放棄に関して指摘した上記諸事実(一,(三)、ァ~オ参照)に関す る審査を疎かにし、中国人労働者もしくは中国政府における個人請求権放棄意思の有無に関する審理を尽く していない。また、審理不尽の最高裁四.二七判決をそのまま鵜呑みにしている。 (ウ)その結果、原審判決が「控訴人らが指摘する事実のすべてを考慮に入れても,日中共同声明五項に関する 上記判断は,変更の要をみない…」と判断した理由については、何らの説明もなく、判決理由が欠落している( 理由不備)。 (三)そこで群馬弁護団は、平成二二年六月十日、現在広島地裁に保管されている中国人強制連行・強制労働西松 事件の全記録を取り寄せたうえ再審理することを求める最高裁宛の上申書を提出しております。 三 最高裁における闘い (1)現在最高裁には、中国人強制連行・強制労働事件として、群馬事件の外に宮崎事件、長野事件、山形事件、七 尾事件の四件が継続しております。これら事件の重要性に鑑み、一括して,大法廷において審理すべきものであ り、上記上申書において、そのことも要請しております。 (2)平成二二年六月二一日、群馬事件を審理する最高裁の担当部が第三小法廷と決まりました。他の四事件,とり わけ近県の長野事件(第二小法廷)や山形事件(第一小法廷)を支援する人たちとも力を合わせ、共に、頑張り ましょう。 平成二二・六・二一廣田記 2011年3月1日、最高裁、上告棄却 主文 本件上告を棄却する。 本件を上告審として受理しない。 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする。 理由 1.上告について 民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限 られるところ、本件上告は、違憲及び理由の不備をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであ って、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。 2.上告受理申立てについて 本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 平成23年3月1日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 那須 弘平 裁判官 田原 睦夫 裁判官 岡部 喜代子 裁判官 大谷 剛彦 |
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